その通り道の真ん中あたりに阪神百貨店があるのですが、ここの地下食料品売り場(デパ地下)は、日経流通新聞等のデパ地下ランキングで、全国で常に上位にランクされるくらいの人気があります。
ここの売り場の特長は、とにかく通路が広いので、どんなに混んでいても、デパ地下にありがちな“肩と肩がぶつかる”ということは通常の時間ではありません。
阪神百貨店は、平日は8時半まで営業しているのですが、7時半を過ぎてくると、いつのまにか大阪のおばちゃんを中心とした客が増え、売り場によっては満員電車並みの混雑率になり、まさに“押し合いへし合い”状態になります。
なぜ、7時半を過ぎると混んでくるかというと、営業時間終了まで1時間を切ると、一斉に値引きをしてくるからです。その値引きも半端ではありません。もちろん?私もその時間帯を狙って?行っていますが、中身の充実した弁当類や惣菜は200円、300円引きはザラ、閉店間際だと半額ということもあります。
最も値引きがすごいのは、ヘンゼルという阪神百貨店オリジナルのパン屋です。大のパン好きの私も大変お世話?になっていますが、連日7時40分くらいになると、奥から男性の店員がプラカードを手にして出てきて“今から食パン・サンドイッチは半額、菓子パンは値段に関わらず全て105円”と声を張り上げます。
すると、常連?とみられる客が、値引きの号令前までに買い占めておいた?とみられる?パンを山盛りにしたお盆を手に、まるで民族大移動をするかのようにレジを目指し、ゾロゾロと移動を開始します。
最初、この安売り事情を知らずに7時半くらいにヘンゼルに行ったとき、“どうして、お店にお客さんがたくさんいるのに、レジの前には誰もいないのだろう”と思ったものです。
7時半くらいだとレジの前に誰もいないのに、レジからほぼ一定の距離には、お盆の上に食パンや菓子パンをあふれんばかりに乗せている客が所狭しとひしめいています。
中には食パンばかり10斤と一体誰が食べるのだろうと思う位の無数の菓子パンをのせたお盆を何も置かれていない店の棚に置き、値引きの号令があるまで、一時待機しているツワモノも見受けられます。
このように東京で言えば、銀座や丸の内に相当する大阪の中心、梅田の阪神百貨店では、連日、食料品売り場で値引きをめぐる熱い戦いがくり広げられています。東京のデパートではそもそも体面上、あまり値引きはしないですし、値引きをしても、大阪のように値引きまでに買い占めて待機するようなツワモノはいません。
東京人も、もちろん安く買いたいという欲望はありますが、大阪人のように買い占める?ほどの熱意?と値引き時間までとことん?粘る体力・気力?そして、周囲の目を全く気にしない?ずうずうしさ?はないようです。